■ロバスト性

ロボットにロバスト性を与えることはとても重要なことである。ロボット制御の要だといえる。ただ、ロバスト性と言っても色々なレベルがある。ジャイロセンサーの情報をサーボに反映することもロバスト性の向上には違いないが、極めて機械的であり、原始的(ローレベル?)である。やはり、ロボットにおけるロバスト性は耐状況性能にある。たとえば「人ごみの中を歩く」というようなことだろう。これは極めて高度でまだまだ実現は不可能であろうが、そこにつながる技術を考えて行きたいと思う。

ローレベルのロバスト性能を向上させるのは簡単である。機械的性能を向上させればよい。剛性を高め、トルクを高め、重量を軽くし、速度を速める。モチロンこれは必要なことで一般的な機械はこの性能を向上させることを常に行ってきている。

一方、ロボットでもこの機械的性能向上の恩恵を受け、基本的性能の向上を図りつつ、別の面のロバスト性能を高めなければならない。それは耐環境性というより、耐状況性というべきか、そのようなものである。

耐状況性とは、今おかれている環境・状況において、本来の目的を遂行するために何をしなければならないのかを判断し、実行することである。

たとえば、上記に記した「人ごみの中を歩く」ということもその一つであるが、もっと基本動作で考えると、「こけない」とか「こけても壊れない」ということも含まれるだろう。「こけない」とか「壊れない」ということは反応速度を上げるとか(重心を下げるというのは入らない)、機械的強度を上げるといった事でも実現できるが、そうではなく、「物につかまってこけないようにする」とか、「壊れないようにこける」といった手段を採用することである。武道で言えば「見切り」か。勝てない相手とは戦わないということで生き残ることが出来るといった類も含まれるのだろう。

耐状況性を備えたロバスト性の実装としては大脳の働きを模倣することが重要と考える。

人間の機械的なロバスト性はそれほど高くないと思われる。ダンスを踊っている時など、通常の動きより速く、複雑であるためではあるが、変化に対しての耐性は低くなっている。練習した時と床面の滑りが異なると途端に踊れなくなる。小石をふんずけたら転んでしまう。ダンスを踊るという行為はいわばモーション再生なのである。もちろん、今のロボットのそれとは段違いであり、耐力も高い。